本格的に辺りが暗くなってきた。
建物の電灯がカラフルに光り、幻想的な世界が広がる。


「羊ちゃん、どこ行きたい?」

「ええと……端っこのエリアがね、昼間の間に回り切れなくて」

「じゃあそこ行こうか」


なんとはなしに交わした会話。
また私の意見を優先させてしまっている、と気が付いて、急いで質問した。


「あ、えっと、玄くんの行きたいところは?」

「俺はもう大体見たから」

「じゃあ……食べたいものとか、買いたいものとか……」

「ないよ。大丈夫」


そっか、と返して顔を伏せる。
全部津山くんたちと回ったんだ。そのパーカーも、美味しいものも、全部。

ねえ玄くん、その時どんなこと考えてた? どんなこと話したの?
はしゃいだり叫んだりしたのかな。優しく笑うだけじゃなくて、驚いたり焦ったり、そんな顔を津山くんたちは見たのかな。

私も、見たかったな。


「わっ⁉」


物思いに耽っていると、突然肩を抱き寄せられた。荒々しい動作に驚く。
隣の彼を見上げた途端、その冷たい視線に背筋が凍りついた。


「――触んな」