さらりと言ってのけた彼に、それもそうかと納得する。


「そうだね……私も玄くんのこと離さないように、ちゃんと握っておくね」


僅かに指先に力を込めて、彼の手を握り返した。
見上げると、パーカーの色と対比するように、じんわり赤くなった耳が目に入る。

――私これ、知ってる。彼が照れている時の証拠だ。

自分のセリフを脳内で反芻し、遅れて羞恥心が襲ってきた。


「あ、えと、ごめんね! 変な意味で言ったわけじゃなくて、」

「うん。離さないで、絶対」

「あの、玄くん」

「でも俺が離れることなんて死んでもないから、大丈夫だよ。前も約束したよね?」


顔が近い。彼の瞳はどこか空虚で、私を飲み込むように迫ってくる。
いつの間にかくっついていた手は離れていて、その代わりとでも言うように、彼の指が私の薬指をなぞった。


「はーい。そんじゃあ俺らは俺らで回ってくるわ、後でな」


津山くんの明るい声掛けで我に返る。
慌てて頷き、またみんなの前で色々と恥ずかしいことをしてしまったな……と内心頭を抱えた。