揶揄われているのかと勘ぐったが、どうやら彼女は本気のようだ。
顎に手を当てて考え込むその仕草に、生真面目な性格が滲み出ている。


「そういうのって、普通男子に聞かなくない?」

「ええ……でも周りにこんなこと聞ける人いないし」


淡々と受け答える彼女は、俺のことを本当にただの友達――いや、クラスメートだとしか思っていないのだろう。
そういう淡白であっさりしたところは嫌いじゃない。久方ぶりに気遣い無用の女友達ができたようで、俺は結構嬉しかったり。


「西本さんってさー。しっかりしてるけど、ちょっと危機感足りないよね」


わざと意地悪く告げると、途端にむっとした顔で彼女が視線を送ってくる。


「馬鹿にしてる?」

「してないよ。でもさ、」


距離を詰めた俺に、数歩後ずさる西本さん。
彼女にぐっと顔を近付けて、耳元で囁いた。


「男にそんなこと言ったら、ぱくっと食べられちゃうかもしれないよ?」


特に男子高校生なんてオオカミだからね。
そんなお風呂上がりにショートパンツで生足晒して、男子部屋の方に来ちゃだめ。髪の毛だって、しっとり濡れて色っぽくなっちゃってる。


「でも、津山くんはそんなことしないでしょ?」