やばいって、何がどのように。
その先を聞きたいような聞きたくないような、複雑な心情だ。


「めっちゃ優しくしたいのにできる自信ない。今も泣き顔見ただけでもう、ほんと無理」


俺はいま友達の興奮事情を聞かされてめちゃくちゃ困ってるんですけどね。夜だからセーフってか? いやアウトでしょ。

百戦錬磨の男も取り乱してしまう彼女とはこれ如何に。
まあ分からなくもない。と言ったら確実に俺は生きて帰れないので黙るけれども、白さんの泣き顔にはこう――ぐっときてしまうものがある。


「散々キスマつけといてよく言うわ。この際だから言うけど、普通にバレてんぞ」


彼女の制服の襟からちらちら覗く赤い所有印。みんな見て見ぬふりをしているが、何となく察している。
いつ何時も消えることのないそれに、俺ですら鳥肌が止まらないのだ。酷い執着心を見てしまったというか、クラスメートの玄を見る目が変わりつつあるのは絶対にそのせいだと思っている。

は、と軽く息を吐いた目の前の彼が薄く笑った。


「当たり前だろ。そのためにつけてんだから」