彼の眉根に、より一層皺が寄る。


「ああもう、ずるい……ずるいよ羊ちゃん」


切羽詰まった声。熱い唇が私の頬に降りてきた。


「好き。死ぬほど好き。もっかい呼んで……?」


懇願する彼に、抗う理由なんてない。
酸素を取り込んだ喉が震えて、それすらもどうでも良かった。


「玄くん、」

「うん。もっかい……」

「玄くん。好き、……ひゃあっ」


不意打ちだった。
右耳の溝を丁寧になぞるように舐められて、肩が跳ねる。


「だ、め……! そこ、やだっ」

「知ってる。羊ちゃん、ここ弱いもんね……?」


確信犯だったらしい。
耐え切れずに彼に縋りつくと、色気を含んだテノールが響いた。


「――もっと俺でいっぱいになって。羊」


頭が真っ白になった。
気付いたらすっかり腰が抜けていて、滲んだ視界に彼の顔が広がる。


「ん、……玄くん、」

「可愛い……」


間髪入れずに、彼の舌が私の涙を拭う。
その吐息が熱くて、心地よくて。私は今すごく幸せなんだと、そう思った。


「玄くん、大好き」

「羊ちゃん……あんまり可愛いこと、言わないでっ……」


俺、どうにかなっちゃう。
彼の言葉を聞いて、苦しそう、と。そんな感想が浮かんだけれど、私も好きすぎて胸が苦しいから、きっと同じだ。