狼谷くんの「好き」って、すごい。
毎日、何度だって聞いているのに、義務感というものが微塵も感じられない。毎回丁寧に気持ちがこもっている。

だから私は言われる度、心臓が高鳴って落ち着かなくなるんだ。心地良くて、温かくて、ずっとこうしていたい。


「うん。私も、好きだよ」


彼の背中をさする。
大丈夫だよって。心配しなくていいよって。ちゃんと伝わっているだろうか。


「羊ちゃん……」


吐息混じりの熱っぽい声が耳元に降りかかって、びくりと肩が揺れた。そのまま軽く耳朶を食んできた彼に、咄嗟に声を上げる。


「か、狼谷くん……! ここ外だからっ」

「うん……ちょっとだけ……」


ちゅ、と耳の中に小さく響くリップ音。
必死に唇を噛んで、濁流に飲み込まれないよう耐える。


「かわいー……羊ちゃん……」

「ひぁ……!」


耳の形をなぞるように彼の舌が這って、最後に吸いつかれた。
狼谷くんの腕が、私の腰を抱く。


「羊ちゃん、耳弱いね。可愛い……」


甘ったるい、嬉しそうな声が囁いてくる。
それにすら背筋が震えてしまって、彼は酷く満足そうだった。


「大丈夫、怖くないよ。……気持ちいいことしかしない」

「狼谷く、」

「好き」


たった二文字の低音に、腰が抜ける。

懸命にしがみついた先。
彼は飢えたような目をして、それから優しく私の頬を啄んだ。