先程から過激な発言を繰り返す彼に、私はずっと引っかかっていたことを述べる。
「わ、私、そんなに綺麗じゃないよ。なんていうか、そんな絶滅危惧種? みたいに保護されるのおかしいし……」
ぼそぼそと主張すると、犬飼くんは突如表情を明るくして口角を上げた。
「ああ、絶滅危惧種……そうですね。まさにそうだ。こんなに清い存在、どこを探したって見つからない。無欲で純粋な天使ですよ……」
彼の顔はこちらを向いている。視線は私に向けられている。それなのに、どうしてだろう。
その目は私を見ていないような気がするんだ。
「……私、全然無欲じゃないよ」
そういられたらどんなに楽だったか。
友達でも構わない。隣で笑っていてくれればいい。ただそう願うだけでいられたら、どんなに。
「もう分からないの。私、きっと狼谷くんを傷つけたんだと思う。あんなに笑ってくれてたのに、目も合わせてくれなくなっちゃった」
あの日、私を押さえつけた力強い腕。ずっと震えていた。
痛かったけれど、辛かったけれど、あの力加減が本気じゃないことくらい、分かってた。
ショックを受けた私よりも、更に深く傷ついたような悲しい顔をして。彼の心が泣いていた。
「どこで間違えちゃったんだろう……どこからやり直したら、ちゃんと笑ってくれるんだろう」



