まだ明るさの勝る放課後の空。
学校の近くの公園に立ち寄った私は、ベンチに座って走り回る小学生を眺めていた。

クラスの作業は粗方終わり、部活の方もあと少しで完成できそうということで、今日は早めに帰宅しようと思っていた。
ちょうど下駄箱まで来た時に狼谷くんを見かけて思わず引き返してしまい、バスを一本逃す羽目になったのだ。

逃げるんじゃなかった、とため息をつく。
狼谷くんに距離を置かれていることが堪えているはずなのに、どんな顔をすれば良いのか分からない。

今は誰とも話したくない気分だったのと、座れる場所があったからという理由でここに来てしまったけれど、すぐに後悔した。


『羊ちゃん、嘘つくの下手だね。目ぇ泳いでるよ』


ここ、狼谷くんと座ったベンチだ。確かそう。覚えてる。


『誰も俺のことなんか見てないよ』


嫌だ。思い出したくない。今その記憶は出てこなくていいから。


『……じゃあ、さ。羊ちゃんは、ちゃんと見てくれるの?』


見てたじゃない。たまに恥ずかしくて逸らしちゃったり、狼谷くんが意地悪言うからまともに見れなかったりしたけれど。


『俺のこと、ちゃんと見てくれる?』