羊、なんか腰引けてたしね。
そう付け足して、カナちゃんはお弁当箱を開けた。


「狼谷の周りの女子くらいだよ、キャーキャー騒いでんのは。他はみんな羊のこと可哀想……同情してると思う」

「可哀想って聞こえたな?」

「そこは気のせいだと思って流してもらえると嬉しい」


ごほん、とあかりちゃんがわざとらしく咳払いする。

いかにも人生充実してます、といった風貌の女の子たちは、いつも狼谷くんや津山くんの側にいる印象だった。

それ以外の女子と男子は、触らぬ神に祟りなし、我関せず、といった感じ。
やっぱりどこか怖いイメージが拭えないのだと思う。


「あの女どもが持ち上げるからいい気になるんだわ。あんなんちょっと顔がいいだけの、ただの不良でしょ」

「ちょ、あかりちゃん……! 聞こえる! 聞こえるって!」

「聞かせとけ聞かせとけ」


散々言って満足したのか、あかりちゃんは椅子にもたれかかって食事を再開する。
私としては、本人の耳に入って怒らせてしまうんじゃないかと気が気でない。


「まー、心配しなさんな。ないとは思うけど、もし陰湿な嫌がらせにでも遭ったら私たちが蹴散らしに行くから」