「はあ……」


机に突っ伏したまま、重々しく息を吐き出す。
午前中の授業が終わった教室は、たちまち話し声で騒がしくなった。


「仰々しいため息ついてんねー。ご飯食べないの?」


カナちゃんの声に顔を上げる。私は緩慢に姿勢を戻して、首を振った。


「食べる、けど……なんか今日はあんまりお腹空かなくて」

「朝ご飯いっぱい食べたの?」

「ううん、そういうわけじゃないんだけど」


自分でも明確には答えられない。ここ数日、ずっと胸の奥がざわざわと落ち着かなくて、何だか憂鬱だ。

原因は分かっていた。津山くんと話してから、私は狼谷くんを完全に意識してしまっている。
それがその時からなのか、それとももっと前からだったのか。線引きはできないけれど。

今までは狼谷くんのことを友達としてきちんと認識できていたはずなのに、それができなくなってしまった。目が合えば逸らしてしまうし、近付かれると反射的に距離を取ってしまう。

今まで通り。狼谷くんの望んでいる通り、「友達」でいなければいけないのに。全然上手くいかない。


「……狼谷くんと喧嘩でもしたの?」