話し声が飛び交う教室。開け放たれた窓から入り込む、湿度の高い風。

始業式が終わって、今日からまた重たい教科書類を持ち運ぶ日々が始まる。

日焼けで少し肌が黒くなった人や、髪をばっさり切った人。見渡せば、それぞれが夏を満喫してきたようだった。


「この時間は文化祭のことについて話そうと思う。決めることが沢山あるから――とりあえず学級委員、進行頼む」


森先生の言葉に、坂井くんが立ち上がる。彼はプリントを受け取ると、先生と入れ違いで教卓に向かった。

来月末に行われる文化祭は、二日間の日程で組まれている。
主に学級委員と文化委員、それから生徒会が中心となって運営をするのだけれど、これが本当に大変なのだ。去年見ていたから分かる。友達が学級委員を務めていて、かなり参っていた。

もちろん文化委員の肩書きを持っている私としては、気合いを入れざるを得ない。一年に一回の大イベント、クラスのみんなだって楽しみにしているはずだ。


「まずはうちのクラスの出し物を決めなきゃいけないんだけど……」


と、坂井くんが軽く頭を掻く。
その隣で「とりあえずみんなの意見聞いてみよう」と快活に笑うのは九栗さんだ。彼女は女子の学級委員を担っている。


「ああ、そうだね。えーと、展示か飲食か。これで多数決とります」