最後にきちんと挨拶をして、狼谷くんのお家を後にする。

すっかり日が落ちて暗くなった道。
私は狼谷くんの隣を歩きながら、どうしたものかと考え込んでいた。


「ごめんね」


ぽつりと、狼谷くんが零す。


「色々変なこと言われてたでしょ。気にしなくていいから」


どう切り出そうか悩んでいたから、彼が先陣を切ってくれて助かった。有難くその船に乗らせてもらうことにして、私は首を振る。


「全然大丈夫だよ! それより、私こそごめんね。その、沢山喋っちゃって……」


津山くんが同じことを言うのと、私が言うのとでは説得力がまるで違う。友達歴数ヶ月で図々しくも語ってしまって、穴があったら入りたい。


「ううん。……嬉しかった、すごく」


咄嗟に彼の方を仰ぎ見ると、珍しく難しい表情をしていた。
もしかして気を遣ってくれているのかな。視線を戻そうとした時、彼の耳が赤いことに気が付いた。

――あ。


「狼谷くん。いま、照れてたりする……?」

「ちょ、待って。だめ。見ないで」


彼の顔を覗き込もうとすると、思い切り逸らされてしまった。


「もう……ずるいって。来られるとだめなの……」