熟れたように色付くその耳に、吐息混じりで囁いた。
びく、と肩を揺らした彼女を今すぐ食べてしまいたい。


「可愛い声」


思わず零した自分の感想は、驚くほど甘ったるい響きだった。
彼女を惑わそうとしているのに、逆に溶かされてしまいそうだ。

朱に染まったままの彼女の頬を撫でる。
震えながら気持ち良さそうに瞳を揺らす様が、酷く加虐心をくすぐった。

そうして彼女と連絡先を交換した俺は、一つの作戦に打って出る。


「えー! いいじゃん楽しそう、行こ!」

「じゃあ、三十一日の五時集合ね!」


教室でのクラスメートの会話。どうやら今月末にイベントがあるらしい。

調べると、「風鈴祭り」と出てきた。
ちょうど彼女を誘う口実も欲しかったところだし、それに何より――


「てかこれ、カップル限定じゃん!」

「あはは。まあ男女比半々で行けば大丈夫でしょ!」


仮に彼女がそれを知っても、俺を意識してくれるきっかけになる。
知らないままでも別にいい。二人でいるところを誰かに見つけてもらえば、噂好きの奴らが勝手に吹聴してくれるだろう。

ゆっくり、時間をかけて、確実に。
外堀から埋めてしまえば、彼女を怖がらせずに囲うことができる。

そのためには念入りに準備をしなければ。

一人ほくそ笑んで、俺は通話ボタンをタップした。