畳み掛けるような俺の口調に、羊ちゃんは驚いていた。
声を上げた彼女に、わざとらしく媚びを売る。


「……だめ? 迷惑?」

「め、迷惑だなんてそんな……!」


はっとしたように首を振る彼女に、内心したり顔だった。

羊ちゃんは押しに弱い。頼まれ事は断れない性格だ。
下手に出て、「迷惑」だなんて単語を持ち出して、彼女の罪悪感を煽るような表情をすれば。羊ちゃんは絶対に頷いてくれる。

狡いと言わば言え。それほどまでに余裕がない。

大丈夫、と俺の手を握り返してくれた彼女に、いまこの子を独り占めしているのは間違いなく自分なのだと実感した。


「……嬉しい。ありがとう」


やっぱり、満たしてくれるのは羊ちゃんだけ。

みるみるうちに目の前の顔が赤くなって、少し意地悪したくなる。
彼女はこういうことに耐性がないからなのか、すぐそうやって俺を煽るのだ。


「羊ちゃん、顔赤いよ。大丈夫?」


自分の顔が良いのは知っている。
それが武器になるのなら、いくらだって使うつもりだ。

きっかけは顔でもいい。でも、いつか。
他でもなく、「俺自身」にそうやって可愛らしい表情を見せて欲しい。


「ここも、真っ赤……」

「ひゃっ」