案の定、どうしてと問う彼女に、俺は答えた。


「これから夏休みだし、今みたいには会えないから。寂しいなと思って」

「さ、寂しい」


戸惑ったように視線を彷徨わせる羊ちゃん。
いきなりパーソナルスペースを詰められて、困っているのは手に取るように分かった。

本当に彼女のことを想うなら、身を引くべきなのかもしれない。
だけど、欲深い自分にその選択肢はなかった。


「……羊ちゃんは、俺の唯一の女友達なんだ」


ごめんね。俺は狡いから、諦められそうにない。
どうにかして君に取り入りたいと思ってる。

最初はあくまで友達として安心させてから、ゆっくり距離を詰めていこう。
彼女に会える口実を作って、少しずつ慣らしていくように。


「他の女の子は、みんな俺のこと『そういう対象』としてしか見てないから。一緒にいて純粋に楽しく笑っていられるのは、羊ちゃんだけなんだ」


極めつけに、眉尻を下げて笑ってみせた。

優しい彼女はきっと、可哀想だと思ってくれるだろう。
同情からでもいい。俺の側にいてくれるのなら、何でも。


「そ、そっか……」

「うん。だから、時々メッセージ送ってもいい? 夏休み中も、どっか遊びに行こ?」