物凄く申し訳なさそうに肩を落とされては、追及しようがない。
気にしてないよ、と慰めてから、私は心配になった。


『病み上がりなのにこんな雨の中走ってきたの? ぶり返しちゃうんじゃない……?』

『……そうなったら、羊ちゃん看病してくれる?』


そう問いかけて真面目な顔で見つめてくる彼に、こくこくと頷いた。
何となく、狼谷くんがこういう顔をする時は肯定しておかないとまずい、と本能が言っていたのだ。


「あ、もうこんな時間……」


そろそろ出なきゃ。
鞄を肩にかけた時、スマホの画面が再び光る。


『早く羊ちゃんに会いたい』


その文字列を目に入れて、思わず固まった。


『またあとでね』


後追いでそんな言葉が送信されてきて、はあ、とため息をついてしまう。

狼谷くんには前々から心臓の安定を脅かされてきたけれど、最近それに拍車がかかっていると思う。
あの日を境に、何かが吹っ切れたかのようにすら感じられた。

こんなに開けっ広げに慕われて、嬉しいのと恥ずかしいのと。
ごちゃ混ぜな感情は、まだ整理しきれていない。


「……なんか、ワンちゃんみたいだなあ」


犬に例えるのは失礼かもしれないけれど、それが一番しっくりくる。

今後こそ鞄を持ち直し、私は部屋を後にした。