何が何だか分からずにいたけれど、私はどういうわけか既に狼谷くんを助けていたらしい。


「そ、そんな、大袈裟だよ。あの時はたまたまいただけだし、冷やしただけだし、それに……」

「ううん。嬉しかったよ」

「え、あ……」


何だろう、いつもより狼谷くんが輝いて見える。笑顔が眩しいというか。
目尻をふにゃりとさせて、蕩けたような笑い方をしないで欲しい。

それに、普段より饒舌だし、言葉の選び方がストレートな気がする。

私の手をゆっくりと下ろさせると、狼谷くんはそれを両手で握り直した。


「羊ちゃん」

「は、はい」

「あのさ。連絡先、交換しない?」


唐突な提案に、呆気に取られる。


「え? い、いいけど……どうして、」

「これから夏休みだし、今みたいには会えないから。寂しいなと思って」

「さ、寂しい」


思わず繰り返してしまった。
破壊力抜群の単語に、頭が沸騰しそうだ。

狼谷くんはそんな私の様子に、少し困ったような顔をする。


「……羊ちゃんは、俺の唯一の女友達なんだ」