肩をすくめる坂井くんに、曖昧に頷く。

私も何となく感じてはいた。
きっと、彼が来ないのは具合が悪いからとか、そういうことじゃないんだと。
確証はない。ただ単に、そんな気がしただけ。


「……変な話しちゃったね。ごめん、聞かなかったことにして」


坂井くんはそう言うと、以降は口を閉ざしてしまった。

委員会を終えて、先生に報告しに行く。
再度「ありがとう」と坂井くんに頭を下げてから、彼と別れた。

人気がすっかりなくなった廊下を歩きながら、窓の外を眺める。


「あれ、雨降ってる」


そういえば午後から降るとテレビが教えてくれていたようないなかったような。
今日の朝は慌てていたから、よく覚えていない。


『羊ちゃん』


僅かに開いた窓から入り込んでくる雨音。
なぜか思い出された彼の声に、きつく目を瞑る。

たった一週間、彼に会っていないだけなのに、会話を交わしたのが随分と昔のように感じた。

やっと仲良くなれたと思ったのに。せっかく学校に毎日来てくれるようになったのに。
本当に、彼はどうしてしまったんだろう。


『羊ちゃん』

「羊ちゃん」