能ある狼は牙を隠す



最後まで解き終わって顔を上げると、狼谷くんは身を乗り出して私のノートを覗き込んだ。


「あ、ありがとう、大丈夫だよ! 答え合わせは自分でやるから!」


ただでさえ二人にかかりきりなのに、私の面倒まで見るのは大変だろう。
これまでは狼谷くんに答え合わせをしてもらっていたけれど、今は私自身余裕ができてきたし、それくらいは自分で出来る。


「いいから。ノート貸して。羊ちゃんはうっかりミス多いんだから、ちゃんと俺が見ないと」

「う、面目ないです……お願いします……」

「ん」


ノートを受け渡して、狼谷くんの表情を観察する。
真剣な顔つきで私のノートに目を通す彼に、なんとなく違和感を覚えた。

いつもよりやけに時間がかかっているというか、答え合わせなんてすぐに終わるはずなのに、狼谷くんはずっと顔を上げない。

もしかして序盤から盛大に間違えちゃったかな。
はらはらと彼の様子を見守っていると、


「……はい。全部合ってる。頑張ってるね」


優しい言葉と共にノートが返ってきた。
それなのに、狼谷くんの表情は少し硬い。

何だろう、と正体の掴めない疑問が胸中を蝕む。
考えても出ない答えだと早々に諦めて、私は椅子を引いた。


「私、ちょっと飲み物買ってくるね」

「はーい。いってら!」