誕生日が特別なのは小学生か、せいぜい中学生くらいまでだと思う。

その証拠に、両親は今朝も何ら変わりなく出勤していった。
別にそれがどうだとか、今更考えることはない。


「よ、今日は早いな」


教室に入って早々、岬が絡んできた。
それを適当にあしらいつつ自分の席へ向かう。

岬はそんな俺に着いてくると、机の上に紙パックのイチゴミルクを置いた。


「……何」

「何って、プレゼント。玄、誕生日じゃん今日」

「どうも」


パッケージの側面には油性ペンで書いたのか、「おめでとう!」とお世辞にも綺麗とは言えない文字が並んでいる。


「え! 今日誕生日なの〜!? おめでとー!」

「知らなかったぁ〜!」


俺と岬の会話を聞いていたのか、近くの席の女子が口々に言い募ってきた。
ありがとう、と笑って返すと、途端に彼女たちは顔を赤らめる。


「え〜俺には? 俺にはありがとうって言ってくんないの?」

「言ったじゃん、さっき」

「女の子には甘いんだから……」


大袈裟に肩をすくめてみせた岬は、「放課後久しぶりにどっか行く?」と切り替えが早い。


「……あー、悪い。先約ある」