あと少しというところで、中島くんの手がドアを制した。
私も負けじと閉め返す。
「離してよ、上月さん」
「やだ。中島くんは前のドアから入ればいいじゃん」
「意地悪すると怒るよ」
「うるさい。中島くんなんか、一回サボって先生に怒られればいいのにっ」
両手いっぱいの力を込めたら、一瞬だけ私のほうが強くなって、ドアが勢いよく閉まった。
──────いや、閉まりきらなかった。
間に、中島くんの手がはさまっているから。
「……ってえ」
低くうなって、すごい形相で睨んでくる。
あまりの怖さに、思わず後ずさった。
ちょっとやりすぎたかも。
でも、中島くんが、悪……。
「ご、ごめんなさい」
あとずさりながら、頭を下げる。
「上月さんは、俺の初めてを奪うのがほんとに上手だね」
無理やり貼り付けられた笑顔から怒りのオーラが出てる。
「覚えてろよ」
このとき、私は悟った。
中島くんとの繋がりは、そう簡単には切れるものじゃないんだって。
──────ああ私
とんでもない人を敵に回しちゃったかもしれない。