くしゃり


彼女の顔が泣き顔になる。
俺は慌てて、彼女の髪を撫でて「ごめん」と囁いた。


「…謝んないで?嬉しいだけだから…凄く、凄く嬉しい」


ぽろぽろと涙を零す彼女に、触れるだけのキスを繰り返して、俺は「好きだよ」と出来るだけ穏やかな声で囁き続けた。



なかなか、上昇できないロマンチスト。
それはきっと、リアルを生きる俺達だから。


好きとか嫌いとか、愛してるとか。

そんな感情よりも、確かなことは…。


貴女が、誰よりも大切だということ。
誰よりも誰よりも、大事だということ。



今は、言葉でしか言い表せられないけれど。
いつか…。



いつか、ちゃんとした『形』で、彼女に想いを贈れたらいいなと思う。


それはまだ…。
俺の中だけの秘密で、俺だけの誓い。


これからも、ヤキモチを妬いて、拗ねて、泣きそうになったりもするだろう。

だけど、その度に。

彼女を好きだと沢山自覚して、笑顔を重ねていきたい。


「んー!美味しい!」

「ほんと?」

「うん!来年も、再来年も、私だけの為に作ってね?」

「莉夏の為だけにしか作らないよ」



こんな、白い日ならば、毎年きてくれても構わない。



Fin.