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 ——翌日。
 バイト先へ行ってみると、香澄は無断欠勤をしていた。今まで1度だって無断欠勤などした事のなかった香澄に、やっぱり何かあったのではと心配になる。


(香澄……。本当に、どうしちゃったんだろ……)


 帰り仕度を終えて裏口から出ると、通りに出た所で突然見知らぬ男性が私を呼び止めた。


「——あのっ! 真紀ちゃ……っ、樋口真紀さん、ですよね?」

「……あ、はい」


 何だか、見覚えのある男性。どこで見たのだろう……?


「あっ……。俺、香澄と同棲してる北川雅也です」


 そう告げると、名刺を差し出した北川さん。どうりで見た事があるはずだ。
 香澄のSNSには、北川さんとのツーショット写真がいくつか載せられている。けれど実際に会うのは初めてなので、直ぐにはわからなかった。
 そんな香澄の彼氏さんが、私に何の用だというのだろうか?


(——! まさか……やっぱり香澄は、事故に遭って入院してるとか!?)


 渡された名刺から視線を上げると、目の前にいる北川さんの様子を伺う。


「あの……っ。香澄、知りませんか?」

「……えっ?」


 私の予想とは全く違った言葉に、思わず声が裏返ってしまった。そんなの、私が聞きたいくらいだ。
 香澄知りませんか? ってことは、家にも帰っていないということなのだろうか……?


「あの……。香澄、家に帰っていないんですか? 4日前の夜から、私連絡がつかなくて……」

「4日前——。その日からです、香澄が家に帰ってないの」

「えっ……」


 心配そうな顔をして俯く北川さん。


「あっ、あの……。その日の夕方に、香澄と会ったんです。バイトが入れ違いで……私、遅番だったんですけど。……それで、バイトが終わって夜中の1時過ぎに電話したら、繋がらなくて……っ」


 私の声に顔を上げた北川さんは、悲しそうに微笑むと口を開いた。


「……夕方には、見たんですね。ありがとうございます。他にも何かわかったら、そこに連絡ください」


 そう言って、私の手元を指差す北川さん。名刺を見てみると、携帯の番号とアドレスが記載されてある。


「あ……、はい。わかりました」

「よろしくお願いします。突然呼び止めてすいませんでした。……それじゃ」


 私に向けて深々と頭を下げた北川さんは、そのままクルリと背を向けるとその場を後にした。