「天内君、僕と子どもを作ろう。今すぐにでも」


「……またその話?」


 あたしは薄目になりながら、隣に座っている門川君をジトーッと見つめた。


 門川君はそんなあたしの冷たい視線にまったく怯む様子も見せず、これ以上ないくらい真面目な顔してあたしを見返している。


 門川君と絹糸が異界からしま子を連れ帰ってきてから、もう二ヶ月くらい過ぎた。


 あの頃はまだ、夏の名残りと秋の気配がせめぎ合っていたけれど、今こうして門川君の私室から眺める庭園はもう秋の終盤。


 ふたり並んで縁側に腰掛け、よく晴れた青空から拭きつけてくる肌寒い風に身をさらしながら、あたしは門川君にハッキリ答えた。


「お断りします」


「なぜだ!?」


 責めるような口調で聞き返してくる彼に、あたしはハーッと大きなため息をつく。


「だって前にも話し合ったじゃん。そういうのは、お互いの機が熟してからにしようねって」


「だから、今がその時期だろう!」


 門川君がさらに声を張り上げて、縁側を掌でパーンと叩いた。


「僕と君が正式に結婚する方法は、もうこれしかないんだ!」