その音が消える前に、君へ。




「ねえ、菅原さん」


「なに……?」


「この場所のこと誰にも言わないでね。俺達二人だけの秘密ね」


「分かった。その代り、【裏切り】なんてしないで」


「……分かった」



少し哀しそうにそう言った途端、榊くんの音が鈍る。


今までにないくらいの大きな音だった。


古びた扉が悲鳴をあげて閉じるようなそんな音が、何度も何度も響いては消えていく。


はっと思って、榊くんを見れば私に背を向けてテントの中へと入っていく。



「榊くんっ!」


「帰って」


「……え?」


「ごめん、自分からここに連れて来てなんだけど、帰って」



冷たく言い放つ榊くんの声に、それ以上彼に近づくことはできなかった。


彼が拒んだから、その理由だけじゃない。


私自身が彼との距離を置かなければならないと強く思ったから。


最初からやっぱり関わっちゃいけなかったんだ。


昔から人と関わること避け続けてきたというのに、なぜ自ら自分の首を絞めるようなことをしてしまったのだろう。


ああ、やっぱり心なんて、大切な人なんて一生いらない。