その音が消える前に、君へ。




檻の中は、同じような仲間がたくさんいた。


でも、どの子も味方にはなってくれない。


自分の力と身を守るための場である以上、同じ境遇でも心から信頼のおける相手ができるわけでもない。



「力なんてたいしたものでもないのに、マジックや超能力とでも思ってくれれば気が楽なのになって。どうせ役に立つことなんてないちっぽけなものなのに」


「確かにね。役に立ったことなんて一度もないか……」


「必要もないものなのに、どうして生まれ持ってくるのか分からない」


「でも俺は、力が役に立つと思った時は【裏切り】を犯すとしても、迷いもなく使うな」



榊くんのその言葉に、私は榊くんを見つめた。


まっすぐなその瞳で夜空を見上げている、その姿にいけないと叫びたくなる衝動を抑えた。


そんなことしてまで何かの役に立たなくていい、【裏切り】なんてしてほしくない。


――だって、あなたは……



「あ!流れ星!」



そう言って示した方を咄嗟に見つめるけれど、流れ星は待っていてくれるものじゃない。


もう一度望遠鏡を覗き込んで、星を眺めた。