日中にはない夜の涼しさと、どこからか聞こえてくる虫の音に耳を澄ませながら一歩ずつ前へと進んだ。
時折聞こえてくる悲鳴に、足を止める。
どうやら先生たちの本気ななかなかのようで、女子の悲鳴だけでなく男子の悲鳴までも聞こえてくる。
「すごいな……」
苦笑交じりの榊くんの反応に、うんと小さく答えた。
足場の悪いこの山道で、驚かされる恐怖より靴ずれが心配になってきた。
「菅原さんって、不真面目な事って嫌い?」
「好きか嫌いかと聞かれれば、嫌い。でも今行っていることも不真面目なことだとは思う」
「じゃあ、この肝試し乗り気じゃない?」
「うん。不参加にしたかった」
そう言うと少し前を歩いていた榊くんが、手を伸ばしてきた。
どこか企んでいそうなでも楽しそうな笑顔を私に向けた。
「じゃあ、俺と不参加ってことで抜け出そう」
「え?抜け出すってどこに?戻ったらバレるよ?」
「道案内は俺の仕事。来て」
昼間にも同じようなことを聞いたような気がして考えていると、そんな私の手を榊くんが掴んだ。



