あまりの強さにバランスを崩しかけるが、背が何かに持たれかかる形となった。
上を見上げれば、不敵な笑みを浮かべた信がいた。
「何してんの」
「お前、もう少しリアクション大きくして。驚かそうとした俺の身にもなって」
「私にリアクションを求めた信が悪い」
「あーもう!本当に可愛くない!」
拗ねた信は、私の髪をぐちゃぐちゃにするように頭を撫で回す。
まったく、人の扱いが雑な男だ。
そんな信の行動に肘パンチを食らわせようかと考えていると、耳元で囁かれる。
「何かあったら連絡すぐ寄越せよ」
「……うん」
短くそう返すと、再び頭を撫で回した。
「泣いて帰ってこいよ~~」
「はいはい」
冷たくあしらうと信が離れ、タイミングよく榊くんに呼ばれた。
「気をつけて行って来い」
信のその言葉に背中を押されるように榊くんと共に夜の山へと足を踏み入れた。



