視線が絡まり合うのを感じながら、胸が締め付けられていく。


澄んだ彼のその音に、何故か泣きそうになる。


おかしい、おかしい、絶対におかしい。


なんでこんな気持ちになってしまうのだろう。


榊くんが笑っただけだというのに、こんなにも幸せで心が満たされる。


関わりたくないと思うのに、興味がどんどんと強くなる。


知らないこの苦しい感情に苛まれながら、榊くんを見つめることしかできない。


すると榊くんの表情が少し固くなったような気がすると思った途端、急に榊くんが立ち上がり私の横をすり抜けて行った。


聞こえる澄んだ彼の音がまた錆びつき、音を小さくさせていくのが分かる。


ああ……やっぱり、彼に関わってはいけない。


彼の音を変えることなど私には不可能な話なのだから。


分かりきってることだけど、彼の音が耳から離れてはくれなくて私は一人その場で彼の音に耳を澄ますことしかできなかった。