これ以上ここにいても気まづくなるだけだと思い、動かない足に力を入れるようにして前へ踏み出そうとした。
だけどあまりにも彼の音が澄んでいて、ずっと聞いていたかった。
こんなことは初めてで自分でも驚いた。
立ち止まって榊くんに向き直り、力を振り絞って声を出した。
「試合、凄かったね」
関わりを持ちたくない、そう思うのに何故か自ら関わりを持とうとする。
こんな一言だけの感想を述べた所でと思うのに、言いたくて仕方がなかった。
唐突な私の感想だと言うのに、榊くんはきちんとありがとうと返してくれた。
「目立つのあまり好きじゃないから本当は本気になるつもりなかったけど、先輩相手にすると闘争心燃えて勝手に体が動いてた結果だけどな」
小さく笑いながら榊くんは、私を見つめた。



