どうして声をかけられたのかと考えてはみるが、急な出来事にまたしても体は硬直する。
動いてもいないというのに、つうっと汗が背中を伝った。
「……私、補欠だから」
か細い声しか出なかったため聞こえたかと心配になったが、そっかと榊くんが返事をしたという事は聞こえたという証拠だ。
ほっとしつつその場から立ち去ろうとするが、何故か足が思うように動いてはくれない。
二人の間には沈黙が流れるしかない。
関わらないようにしてきているのに、どうしてこうも小さな関わりは再び訪れるのだろう。
チラリと榊くんを見ると、体育館の外壁に頭を預けるようにして天を仰いでいた。
いつものような彼の音は聞こえないどころか、今日は透き通って聞こえてくる。



