いつもなら冷静にいれるというのに、どうしてこんなに気持ちが高ぶってしまうのだろう。


大きくため息をついて、ゆっくりと歩き出す。


この音を聞いているから思考がおかしくなってしまったんだと思いたくて、本を借りる手続きを済ませるとすぐさま図書室から立ち去った。


錆びついたような彼の音は、今日はやけに低い音を奏でる。


周りから響いて聞こえてくる音とはまるで違う、彼の音はどうしても胸が苦しくなる。


聞きたくない、けれど聞こえてしまう私のこの音という世界。


それと向き合って生きていかなければいけないのだから、神様は割と残酷な事をする。


仕方ない、これが私という人間で力なのだから。


妙に高鳴る鼓動を抑えながらも、読みたかった本をぎゅっと抱きしめた。