嘘だ……こんな、こんな事ありえない。
だって榊くんには想い人がちゃんといて、その人と花火大会に行きたいって……
放課後勉強しに行こうと商店街に行った時に、愛おしそうに眺めてたじゃない……
「これが俺の全て。これで共犯者だから罪は半分こね」
「嘘でしょ?榊くん、だって私ーー」
「裏切りを犯してまで伝えるような内容じゃない。ただ俺もまだ言ってない事がある」
でも、と意地悪な笑顔を向けて今度は頭をくしゃりと撫でてきた。
「紗雪の約束がまだだから、紗雪の約束が果たせた時に俺も伝えたいことがある。だからここで待っていて。紗雪と俺の約束」
歪む視界をぐっと堪えて、私は榊くんを見つめた。
約束、その言葉に力強く頷くと、目尻の涙を榊くんが拭う。
そして榊くんは自分の胸元を叩き示しながら、口を開いた。
「俺の病気は最悪なことにこの日本では俺しか発症していない、心疾患系の難病なんだ。言わば貴重な被験者。治療費は国から出てるからまあ良しとしてる。でも色々と実験台にされてきたけど、ついに日本ではお手上げ状態になった」
「で、でも私にはしっかり榊くんの音は届いてる」
「うん。だからこれから俺、アメリカに行ってくる」
「え……」
アメリカという言葉に、驚きを隠せなかった。
てっきり都心部の大学病院かどこかに入院するのかと、勝手に思っていた。
まさか国を飛び越えて行くなんて……



