ゆっくりと繋いだ手を下に下ろし、優しいその表情で私を包む。



「ここに入学してずっと退屈でいた。そんな時しっかりとした糸で数少ない人としか糸を繋がない人がいた。そんなの見たのは初めてだった。俺はもう、その人の繋がりに入りたい、その一心だった」



花火大会の時に一緒に行きたいと言っていた人だろうか、嬉しそうに話す榊くんのその声に少しだけ心が痛んだ。

それでも榊くんの真実を知りたくて、一言一言をしっかりと聞く。

この感情を知った限り、あなたの全てを知りたいから。



「どれだけ声をかけようとも俺には興味を示さない、信頼した人にしか心を開かないんだ。糸は経った二本だけ。それだけでどうしてそんなに強く生きれるのか不思議だった」


「二本だけ……」


「俺には入る隙間がない、そう思った。だけど、俺の持病が悪化した時から変化が起こった」



榊くんが語る点と点が少しずつ線となって、繋がっていく。

震えそうになる前に榊くんがぎゅっと手に力を加えた。



「図書館で初めて会話した時、ようやくその人の視界に入れた。嬉しくてつい追いかけた。でも絶対に変人だって思われた。でも球技大会でも臨海学校でも次々と奇跡は起こって、その人と同じ時間を過ごせた」


「さ……かき……くん」


「気づいたらその人の糸は俺に向けられては拒まれて、それを繰り返してた。でもしっかりと俺の糸と絡めようと頑張ってた」


「榊……くん!!」



絞り出した声に榊くんは、嬉しそうに私の頬を撫でて笑いかけてきた。