ポロポロと落ちていく涙を、榊くんはそっと拭って私の頬を撫でた。

愛おしむように見つめてくるその表情に、涙が再び溢れ出す。


「ありがとう、紗雪。なら俺も裏切りを犯す」


そう言って、榊くんは私の左手を取ってゆっくりと持ち上げた。

榊くんの視線が私達の手に向かい、じっと見つめている。



「俺には人との繋がりを示す糸が見える。指に巻かれたこの糸は幾千もの人と繋がっては切れる、それが俺の世界」


「繋がり……?」


「運命の赤い糸みたいなもの。ただ俺の場合は嫌なものも全て見えてくる繋がりの糸」



そう言っては、私の手を包み込みきゅっと握りしめた。

何度も何度も私の手の感覚を確かめるように、指を絡ませて来る。



「無理やり仲良くなって上辺だけの奴らは、本当に自分の糸とは絡み合うことはない。俺の事を好きだと言って告白してくる子なんか一目瞭然で好意の強さが分かる」


「人をそれで判断してしまうって事?」


「ああ。どいつもこいつも繋がりは薄い。それでも媚びるように好きだと嘘を吐く。そんな世界にうんざりしていた。そんな時だった」



手を見つめていた榊くんが、私の瞳を捕らえて逃がさない。

絡み合う視線に、胸が高鳴る。