それでも伝えるために私は来たのだから、全て伝えなきゃ。

私の為だけじゃない、榊くんのためにも。

これが本当の私だから。



「昔仲のいい友達の音が濁ってしまった。それを聞くことのできる私は、彼女はもう少しで死んでしまうそれを悟っていた。でもその時にちゃんと裏切りを犯してでもいいから、その子に真実を伝えればよかった、そうすれば良かったのに……」



また明日ね、それが最後に彼女と交わした言葉だった。

その日から彼女とはもう二度と会えない状態になってしまった。



「8年前に起こった通り魔殺人事件覚えている?」


「……うん」


「その子はその事件に巻き込まれて、もう二度と帰ってこない人となった。……私のせいで」



あの時の後悔がねっとりと心を包んでは離してはくれなくて、その日から私は人と関わることをやめた。

もう二度と大切だと思う人を失わない為に。

他の人の音を聞かないように、自分の世界で響く自分の音だけに集中したくて。