「次、来るのはいつ?」

 刹那、祥真が低い声で囁くように聞いた。

 祥真に〝次〟を求められている気がして、月穂はどうしようもなく、うれしい気持ちが心の中に溢れた。

「四日後の月曜日の予定ですけれど……」
「四日後か……。俺がマドリードに滞在している日だな」

 月穂が答えると、祥真は腕時計を見ながらつぶやいた。

「日曜に発って戻りが水曜……ちょっと長いな」

 ふと、月穂は気がついた。

 祥真の左手首の高級そうな腕時計に驚く。
 しかし、吃驚した理由はそれが高級なものだからではない。

 腕時計の存在自体に驚いた。

(ということは、昼過ぎの〝あれ〟は……)

 起き抜けの祥真に、手首を掴まれ、力強く引き寄せられた。
 一瞬、なぜこんなことをするのかと思ったが、月穂はすぐに、時刻を確認したかったのだと思っていた。

 祥真が腕時計をしていたのなら、あのときの行動の真意は――。

 まだ着信の音色が静かな廊下に聞こえている。

 余程、急ぎのことなのだろうと思う傍ら、言葉が出てこない。
 月穂は祥真の腕時計から目を離すことができずにいた。

 ふいに、顔が近づいてきたと思ったら、次の瞬間にはもう距離はなくなっていた。

「ん――」

 二度目のキスに驚いて、小さな声を漏らす。