BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー

夕貴の性格や対人スキルならば、多くの人とコミュニケーションが取れて、友人も多いことだろう。きっと、黙っていても人が寄ってくるタイプだ。

 それにも関わらず、祥真のそばにくるのだから、夕貴の中で祥真は特別に違いない。

 そして、同じように自分も祥真に惹かれている。

 静まり返った廊下に、自分の大きな心音が響いているような錯覚がする。心臓が激しく暴れていることに、祥真に気づかれてしまいそうだとすら思った。

 そのとき、祥真が口を開く。

「なあ」

 同時に、携帯から着信音が聞こえてきた。
 月穂は音の出どころを探るように視線を彷徨わせ、祥真のスラックスのポケットに目を留めた。

 着信音はまだ鳴っている。

「あ。まだお仕事中ですよね。時間を取ってしまってすみません。よかったらこれ差し上げます。結構美味しいんですよ。このあとも頑張ってください」

 月穂は鳴り続ける携帯の音に急かされるように、手に持っていたタブレットを祥真に渡し、そそくさとお辞儀をした。
 カバンを肩にかけ直し、持ち手を握り締めて踵を返す。

 二歩目を踏み出す瞬間、力強く腕を掴まれた。

 反射で振り返ったが、祥真は腕を掴んだままなにも言わない。

「あ……あの、電話が……」

 しつこく音を上げている携帯に、月穂のほうがそわそわとした。しかし、祥真は携帯には目もくれず、月穂をジッと見つめる。

 硬直した時間が、とてつもなく長い時間に思える。

 祥真の黒い瞳を見続けていると、月穂は祥真とふたりきりの世界にいるような気持ちになる。

 胸が高鳴る。緊張と高揚の狭間に揺れ、月穂は目線すら動かせずにいた。