自分がつらい思いをした過去を語るのは、惨めさや悲しさがぶり返す。加えて、そんなダメだった自分を曝け出すのが恥ずかしい。
なんでもないように話すはずが、いつの間にか笑顔が歪み、声は震える。
しかし、ここで言葉を詰まらせないように、と気丈に振る舞った。
「まあでも、あのときの自分ももっともっと必死に声を上げていれば、誰かに届いたかもしれない。すぐに諦めた自分が悪いんです」
「悪いわけないだろ。閉じ込めたやつらが百パーセント悪い」
祥真が言下に否定するものだから、月穂は心が軽くなる。
「ロスへ行ったら、少しは強くなれるかと思ったんだけどなあ。でも、実際は隼さんに迷惑かけたりして……。結局さほど変われてないなあって。当たり前ですよね。人間、簡単には変わらない」
自嘲気味に力なく笑って、情けない気持ちを押し込める。
かっこ悪い自分を、これ以上祥真には見せたくて、平気な顔を作り冗舌になる。
「私は昔から精神安定剤を持ち歩いてます。……と言っても、本物の薬じゃないですけれど」
月穂がそう言ってカバンからおもむろにタブレットを取り出すと、祥真は目を丸くした。
「これは……」
「そうです。今日、隼さんが届けてくれたタブレット。これはその辺の薬局にもある普通の健康食品ですが、私にとっては本物の薬みたいなものなんです」
月穂はまるで業務中のような口ぶりで、さらに説明をする。
「偽物でも、本物だと自分に思い込ませることで、まるで本物のような効果を得られることがあるんです。私がまさにそれで、当時、極度の緊張を和らげるために校内カウンセラーがくれたんです」
人前に出るのが怖くなり、学校も休みがちになった。
自宅でも、自分の考えや思いをうまく伝えられないかもしれないという不安から塞ぎがちになった。
この先生きていくためには、乗り越えなければならないとわかっていても、どうしようもできなかった。
そんなとき、唯一心を許したカウンセラーが、『魔法の薬』と言ってくれた。
気休めと言われればそれまでだが、確かに月穂はそれを口にすれば気持ちが落ちつく。
そして、そのおかげでなんとか学校に通うこともできた。
大袈裟に聞こえるかもしれない。でも、月穂はそのカウンセラーと『魔法の薬』に命を救われた気さえしたのだ。
月穂は自分の手の中にあるタブレットを見つめ遠い昔を思い出しながら失笑する。
なんでもないように話すはずが、いつの間にか笑顔が歪み、声は震える。
しかし、ここで言葉を詰まらせないように、と気丈に振る舞った。
「まあでも、あのときの自分ももっともっと必死に声を上げていれば、誰かに届いたかもしれない。すぐに諦めた自分が悪いんです」
「悪いわけないだろ。閉じ込めたやつらが百パーセント悪い」
祥真が言下に否定するものだから、月穂は心が軽くなる。
「ロスへ行ったら、少しは強くなれるかと思ったんだけどなあ。でも、実際は隼さんに迷惑かけたりして……。結局さほど変われてないなあって。当たり前ですよね。人間、簡単には変わらない」
自嘲気味に力なく笑って、情けない気持ちを押し込める。
かっこ悪い自分を、これ以上祥真には見せたくて、平気な顔を作り冗舌になる。
「私は昔から精神安定剤を持ち歩いてます。……と言っても、本物の薬じゃないですけれど」
月穂がそう言ってカバンからおもむろにタブレットを取り出すと、祥真は目を丸くした。
「これは……」
「そうです。今日、隼さんが届けてくれたタブレット。これはその辺の薬局にもある普通の健康食品ですが、私にとっては本物の薬みたいなものなんです」
月穂はまるで業務中のような口ぶりで、さらに説明をする。
「偽物でも、本物だと自分に思い込ませることで、まるで本物のような効果を得られることがあるんです。私がまさにそれで、当時、極度の緊張を和らげるために校内カウンセラーがくれたんです」
人前に出るのが怖くなり、学校も休みがちになった。
自宅でも、自分の考えや思いをうまく伝えられないかもしれないという不安から塞ぎがちになった。
この先生きていくためには、乗り越えなければならないとわかっていても、どうしようもできなかった。
そんなとき、唯一心を許したカウンセラーが、『魔法の薬』と言ってくれた。
気休めと言われればそれまでだが、確かに月穂はそれを口にすれば気持ちが落ちつく。
そして、そのおかげでなんとか学校に通うこともできた。
大袈裟に聞こえるかもしれない。でも、月穂はそのカウンセラーと『魔法の薬』に命を救われた気さえしたのだ。
月穂は自分の手の中にあるタブレットを見つめ遠い昔を思い出しながら失笑する。



