BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー

「君がひとりひとりと丁寧に向き合うように、俺ももっと丁寧に向き合おうってフライトのたびに自然と思えるんだよ。そして、ほんの少しだけだけど……小田機長に近付けた気がする」

 いつもの涼しい目元が緩んでいて、満面の笑みを浮かべている。

 祥真が以前、夕貴に向けていた笑顔が、月穂の脳裏に蘇る。
 心を開いた柔らかなその表情を、密かに自分へも向けてほしいと思ったことがある。

(そんな表情をされたら……)

 彼との距離はこのままで十分――。

 そう、つい数時間前に思ったことなのに。

「まあ、ただの自己満足だろうけど」

 祥真は苦笑したあと、おもむろに手を伸ばす。
 月穂は頬を触れられ、小さく肩を上げた。

「さっきのあの男が言っていた、閉じ込められたって話を聞いて思ったんだけどさ。もしかして、それが原因でこの間の停電のときも硬直してた?」

 祥真の手の温もりに動揺しながら、小さな声で答える。

「隼さんの言う通りです。さっきの人は、前に少しお話をしたことのある、当時私が苦手だったクラスメイトで……」

 月穂はなるべくサラッと説明しようとした。
 あまり重々しい雰囲気で話せば、祥真にも気を遣わせるし、なにより自分が落ち込んでしまいそうだ。

「放課後、ふざけて音楽室に閉じ込められたことがあって……。音楽室だと、なかなか声もドアの向こうに届かなくて。もう陽も落ちて暗くなったとき、運悪く停電に……」