BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー

月穂は満面の笑みを浮かべた。

「ありがとうございます」

 小田は月穂の言葉で我に返り、急に声が小さくなる。

「え。なんのお礼だい?」
「まるで私もパイロットになって空を飛べた気分になれたので」

 気づけば小田の話に引き込まれ、脳内で世界中を飛び回った。

 自分がこんなに楽しい気分にさせられている。
 すなわち、小田自身も高揚した気持ちでいただろう。

 きっと、小田の精神状態はいい方向へ向かうはず。
 自分の経験を夢中で話す彼を目の当たりにして確信した。

「そうか……。俺の話だけでもそういう気持ちになってもらえるなら……」

 小田がボソッと漏らす。

「このままでは教官は難しいだろう。でも、訓練資料を作成したり……そういう部署ならまだ大丈夫だろうか」

 小田の言葉を耳にした月穂は、見る見るうちに目を大きくする。

 彼が初めてここでカウンセリングを受けてから、ずっと未来の話にはならなかった。
 単なる世間話と、ときどき過去の話を淋しそうに語るだけだった。

「やっぱり、厳しいかな……」
「新たに一歩踏み出すときは、周りの声が怖かったり、自信が持てなかったりしますよね」

 月穂は涙を滲ませながら破顔した。

「でも、私は小田さんが具体的な目標を見つけられて、とてもうれしいです。ぜひこれからも応援させてください」

『仕事だから』ではない。月穂は臨床心理士という立場を関係なくして、小田の再起に心から喜んだ。
 小田は「ありがとう」と微笑んで、窓を見つめる。

「これから天気が崩れそうだ」
「え? 今はとても天気がいいのに……」
「はは。僕の勘が鈍ってなければね。帰るときは一応気をつけて」

 彼はそう言い残して部屋を出ていった。
 その後ろ姿は凛として見えた。