「どこでも仮眠を取れるというのは、パイロットにとって必要な素質でもある」
「え?」
小田は懐かしそうな眼差しで祥真を見て言った。
「体力的にも厳しい仕事だ。国際線も担当すれば時差の影響もある。だから、休めるときに休むというのは正しい」
「ああ、そうなんですね」
『今日は話がしたい気分だ』と言う小田は、言葉の通り今日は饒舌だ。
月穂は『だからか』と納得し、頷いた。
そして、彼が寝顔を晒せるのは心を許した相手だけというわけではなく、むしろ日常的なことなのだ、と落胆する。
「けれど、隼はそういうタイプじゃなかったはずだ」
瞬間、小田に注目した。問い質すこともせず、言葉の続きを待つ。
「今やもう制服が懐かしく思える。でも今日は俺もこの制服を着ていたよ。夢の中で」
小田は初めて見せるような穏やかな表情をして喋る。
祥真の話の続きが気になってはいたが、話の腰を折るわけにはいかない。
月穂はいつもどおり、クライアントの話を聞くことに徹する。「どんな夢だったんですか?」と尋ねれば、彼は目尻に皺を作り、「空の上だよ」と答えた。
「コクピットに入り、滑走路に出てギアのブレーキを解除する。オートフルスロットルのスイッチを入れ、左手で操縦かんを握る。ディスプレイで速度を確認し、コーパイの数値上昇コールを聞く。ここが一番緊張する」
小田の視線や四肢の動きに、コクピットの背景が見えた気がした。
メディア程度でしかコクピットの知識のない月穂ですら、ぼんやりと見えているのだ。本人はもっと鮮明に見えているに違いない。
「時速三百キロを超えて滑走するからね。機体が浮き、白い雲を突き抜けたかと思ったら、次の瞬間清々しいほどの青の中にいるんだ」
その証拠に、小田の瞳は光を取り戻し、生き生きと語り続ける。
「夜はまるで宇宙にいるみたいだし、雷も綺麗だと思ってしまう。ブラジルの満天の星空、カナダのオーロラ、ドーハの高層ビルも全部幻想的だ」
「え?」
小田は懐かしそうな眼差しで祥真を見て言った。
「体力的にも厳しい仕事だ。国際線も担当すれば時差の影響もある。だから、休めるときに休むというのは正しい」
「ああ、そうなんですね」
『今日は話がしたい気分だ』と言う小田は、言葉の通り今日は饒舌だ。
月穂は『だからか』と納得し、頷いた。
そして、彼が寝顔を晒せるのは心を許した相手だけというわけではなく、むしろ日常的なことなのだ、と落胆する。
「けれど、隼はそういうタイプじゃなかったはずだ」
瞬間、小田に注目した。問い質すこともせず、言葉の続きを待つ。
「今やもう制服が懐かしく思える。でも今日は俺もこの制服を着ていたよ。夢の中で」
小田は初めて見せるような穏やかな表情をして喋る。
祥真の話の続きが気になってはいたが、話の腰を折るわけにはいかない。
月穂はいつもどおり、クライアントの話を聞くことに徹する。「どんな夢だったんですか?」と尋ねれば、彼は目尻に皺を作り、「空の上だよ」と答えた。
「コクピットに入り、滑走路に出てギアのブレーキを解除する。オートフルスロットルのスイッチを入れ、左手で操縦かんを握る。ディスプレイで速度を確認し、コーパイの数値上昇コールを聞く。ここが一番緊張する」
小田の視線や四肢の動きに、コクピットの背景が見えた気がした。
メディア程度でしかコクピットの知識のない月穂ですら、ぼんやりと見えているのだ。本人はもっと鮮明に見えているに違いない。
「時速三百キロを超えて滑走するからね。機体が浮き、白い雲を突き抜けたかと思ったら、次の瞬間清々しいほどの青の中にいるんだ」
その証拠に、小田の瞳は光を取り戻し、生き生きと語り続ける。
「夜はまるで宇宙にいるみたいだし、雷も綺麗だと思ってしまう。ブラジルの満天の星空、カナダのオーロラ、ドーハの高層ビルも全部幻想的だ」



