BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー

祥真は腕を組んだ格好のまま、瞼を閉じていた。
 勇気を出して振り返ったのに、と拍子抜けし、力が抜け落ちた。

「……また寝てる」

 小さく聞こえる心地よさげな寝息は、こちらまで心地よくなる。
 いつどこでも寝られる体質なのかと感心し、月穂は静かに祥真の寝顔に近づいた。

 出会ったときから思っていた。

 整った顔立ちで、一見近寄りがたかった。怜悧な瞳を向けられると緊張した。
 でも、寝顔は違う。気の抜けた眉のせいか、伏せられた瞼のせいか、あどけなく見える。

(次のフライト時間を聞いてないけれど、五分くらいは大丈夫だよね)

 できればギリギリまで休ませてあげたいところ。しかし、時間厳守をしなければ多くの人に迷惑をかける職だ。起こしてあげるほうが親切だろう。

 そのとき、窓から突風が入ってきた。祥真の髪が一瞬宙を舞うと、長い睫毛を隠した。
 月穂は指を伸ばしかけるも、触れるのを躊躇う。

 指先で彼の髪を掬うだけ。ただそれだけなのに、月穂から冷静さを奪う。
 心臓が騒ぎ、体温が高くなる。

 祥真への思いを再確認し、ひとり頬を赤らめた。

 その後、乱れた髪を戻しても起こすことなく済んだ瞬間、ホッとする。気の許したような顔を眺め、思う。

 ――時間が止まればいい。