BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー

「どう? 向こうのほうは慣れた?」

 浮かない顔をしてパソコンに向かっていると、花田に声をかけられ、肩を上げた。

「はい。流れ自体は。だけど、当たり前ですが、それぞれ相談の内容は違うので……」

 今は就業時間だというのに、さっきの夕貴や乃々の言葉ばかりぐるぐると回っていた。上司である花田の声によって我に返ると、雑念を抱きながら仕事をしていたことを反省する。

「それはそうね。あ、最近見た論文がこの辺に……あったあった!」

 申し訳ない気持ちで肩を窄めたところに、分厚い一冊の本を差し出される。

「EAPは従業員援助っていうくらいだから、この内容は無駄じゃないと思うわよ」

 手元に焦点を合わせると、〝ストレスと援助要請〟と書いてある。
 月穂は両手で持った本をジッと見た。

(これ、小田さんの力になれるかな)

 不意に浮かんだのは、ここ最近面会回数の多い小田。

 耳が不調なこと以外は、とりあえず普通に生活を送れている。しかし、表に出さないだけで、内のストレスや援助要請は大きいかもしれない。それを見過ごせば、大変なことになる。

 花田はUAL社について、月穂に一任している。それもあり、特に大きな問題でなければ、詳細を花田に伝えることはしていなかった。
 ……にもかかわらず、今必要そうな情報をサラッと提供してくれるのだから敵わない。

「ありがとうございます。少しお借りします」

 月穂は深々と頭を下げ、時間が空けばすぐに論文に目を通していた。

 その日を含め二日間、病院勤務だったが、夕貴の告白を思い出しては、祥真への感情との狭間で揺れ動く日々を送っていた。