「いつまで?」

 ちょうど耳元の辺りで祥真の声がして、思わず肩を上げる。

「え……?」
「うちの会社に来るのはいつまで?」

 緊張で震えた声で聞き返すと、少し補足して答えられた。

 祥真の声はほどよく低く、耳に心地いい。
 男性の中には、とても低い声だったり、言葉や話し方が乱暴だったりする。そういうタイプの男性は正直苦手だった。

「それはまだ、明確には知らされていないんです」

 月穂が本に目を向けたまま答えると、祥真は「へえ」とつぶやくだけ。ふたりはその場から動かず、少し沈黙が続いた。

 途切れた会話をどうにかしなければ、と気持ちは急くが、祥真との距離感が落ち着かない。
 話の糸口が見つからないのもあって、振り返って彼を見ることもできずにいた。

 刹那、ドンッ!と落雷の音が響く。
 身体の奥まで振動が伝わるような衝撃が何度か続いた。

「近いですね。さっきまで遠くに聞こえていたのに」

 月穂がカーテンで仕切られた窓のほうを見て、ぽつりと言う。その間にも、また一度雷が落ちる。

「雷、怖くないんだ」

 祥真の意外そうな反応を受け、身体をクルッと回した。

「はい。大きな音は平気――」