「まだ止んでない」

 雨音とともに、遠くの空からゴロゴロと聞こえてくる。

(今日の天気予報は大外れだ)

 ため息とともに、カーテンを閉める。
 振り返って顔を上げた際、初めてまともにリビングを見渡した。

(さっぱりした部屋……。彼のイメージ通り)

 テレビボードやダイニングテーブルなどの家具はナチュラルブラウンで統一され、余計なものはどこにも置いていない。窓の横にあるカラーボックスには、本で埋められていた。

「飛行機関連の本ばっかり」

 思わず声に出してしまったが、自分も似たようなもので自宅には仕事関連の本が並んでいるな、と苦笑した。

 そのとき、廊下から足音が近づいてきて、咄嗟に姿勢を正した。

「また突っ立ってんの?」

 祥真は月穂を見るなり失笑した。

「その……今、外を見ていて。本当突然降られると参りますね。雨予報なんてなかったのに」
「心配ない。たぶん、もうすぐおさまると思う」

 月穂は目を丸くする。

「もしかして、仕事柄そういうことがわかるんですか?」

 思い返せば、雨が降り始めるときも先読みしていた気もする。
 月穂が尋ねると、祥真はボソッと返した。

「雲の流れで。大体だけど」
「やっぱり! じゃあ、隼さんがよく空を眺めているのも癖みたいなものなんですね。パイロットは天候情報は重要そうですし」