月穂は祥真の部屋に着くなり、浴室へ案内された。

「風呂はこっち。タオルはこれ使って」
「あ……ありがとうございます」

 テキパキと動く祥真と対称的に、月穂は未だに今置かれている状況に困惑していた。

 そんななか、不意に祥真がジッと見ていることに気がつき、さらに動揺する。

「スーツだから乾燥機はダメだろう? 君が着れそうな服を探して置いておく」
「重ね重ね、すみません」

 祥真が脱衣所のドアを閉め、ひとりきりになった途端「はー」と息が漏れる。

 さっき必死で走っている間は気にならなかったが、濡れた衣服は正直気持ちが悪い。

 月穂は肌に貼りつくをブラウスを脱いで浴室に入り、身体をザッと洗い流す。ゆっくりとシャワーを浴びてなんかいたら、祥真が風邪をひいてしまう。そう思っていたため、数分で浴室を出た。

 身体にタオルを巻き、すでに置かれていた着替えの中からそっとTシャツを選んで手に取る。

(これ、隼さんのだよね。当たり前だけど大きい……)

 広げたTシャツを見て、自分がそれを着ることを想像する。
 ただ服を貸してもらうだけなのに、すごく恥ずかしく思えた。

 しかし、それ以外に着るものはない。
 月穂は照れる気持ちを抑え、Tシャツに袖を通した。