祥真に不思議そうな顔で尋ねられ、ハッとして視線を上げる。
「あ、いえ。ラテアートって飲むのが勿体なくて……」
月穂は苦笑いを浮かべ、カップに両手を添えた。
「それに、この表面張力で浮かぶ絵がゆらゆら揺れるのを見ていると、無になれるというか……心が落ち着きますね」
リラックスした気分で口元を緩める。ラテも店の雰囲気も、月穂の心を和らげた。
再びラテに目を落とすと、祥真がカチャリと小さな音を立て、自分のカップに長い人差し指を通した。睫毛を伏せて、形のいい唇を薄く開く。
「だけど、閉店までそうして眺めてるつもりか?」
「そっ、そうですよね。じゃあ、いただきます」
祥真の指摘に首を竦め、そっとカップを持ち上げた。
(そうだ。私のペースにつき合わせてしまったら迷惑だ)
うっかりプライベートの時間を満喫していた、と反省し、慌ててラテを啜った。
リーフの根の部分からラテを飲むと、ほんの少し絵が崩れる。しかし、それを残念い思う間もなく、口内にミルクのまろやかさが広がり、目を大きくさせた。
「……美味しい!」
これまで、カフェなどでラテを何度か口にしたことはある。けれども、こんなに素直に『美味しい』という言葉が零れ落ちたのは初めてだ。
「それはよかった」
祥真の柔らかな笑みは、極上のラテをも忘れさせる。
月穂は彼の陽だまりのような笑顔に目を奪われた。
しかし、祥真は自分の表情が緩んでいることに気付いていない様子で、コーヒーを味わいながら窓に顔を向けた。
「ここ……本当にお好きなんですね」
月穂がぽつりと言うと、祥真は一瞬驚いた瞳を見せた。それから頬杖をつき、窓から遠くを眺めながら答える。
「まあね。外は賑やかでも、この店の中は時間がゆっくり流れている感じがするから」
「――確かに」
月穂は祥真の言葉に深く頷く。すると、祥真は綻ぶ顔を隠すように、肘をついている手で鼻先まで覆う。
「ただ閉店が八時だから、仕事後だと間に合わないことが多くて……。今日は久々に来た」
そっぽを向いて言う彼に、月穂は満面の笑みで返した。
「寛げる場所があるっていいですね」
「あ、いえ。ラテアートって飲むのが勿体なくて……」
月穂は苦笑いを浮かべ、カップに両手を添えた。
「それに、この表面張力で浮かぶ絵がゆらゆら揺れるのを見ていると、無になれるというか……心が落ち着きますね」
リラックスした気分で口元を緩める。ラテも店の雰囲気も、月穂の心を和らげた。
再びラテに目を落とすと、祥真がカチャリと小さな音を立て、自分のカップに長い人差し指を通した。睫毛を伏せて、形のいい唇を薄く開く。
「だけど、閉店までそうして眺めてるつもりか?」
「そっ、そうですよね。じゃあ、いただきます」
祥真の指摘に首を竦め、そっとカップを持ち上げた。
(そうだ。私のペースにつき合わせてしまったら迷惑だ)
うっかりプライベートの時間を満喫していた、と反省し、慌ててラテを啜った。
リーフの根の部分からラテを飲むと、ほんの少し絵が崩れる。しかし、それを残念い思う間もなく、口内にミルクのまろやかさが広がり、目を大きくさせた。
「……美味しい!」
これまで、カフェなどでラテを何度か口にしたことはある。けれども、こんなに素直に『美味しい』という言葉が零れ落ちたのは初めてだ。
「それはよかった」
祥真の柔らかな笑みは、極上のラテをも忘れさせる。
月穂は彼の陽だまりのような笑顔に目を奪われた。
しかし、祥真は自分の表情が緩んでいることに気付いていない様子で、コーヒーを味わいながら窓に顔を向けた。
「ここ……本当にお好きなんですね」
月穂がぽつりと言うと、祥真は一瞬驚いた瞳を見せた。それから頬杖をつき、窓から遠くを眺めながら答える。
「まあね。外は賑やかでも、この店の中は時間がゆっくり流れている感じがするから」
「――確かに」
月穂は祥真の言葉に深く頷く。すると、祥真は綻ぶ顔を隠すように、肘をついている手で鼻先まで覆う。
「ただ閉店が八時だから、仕事後だと間に合わないことが多くて……。今日は久々に来た」
そっぽを向いて言う彼に、月穂は満面の笑みで返した。
「寛げる場所があるっていいですね」



