BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー

 パソコンが入ったカバンを肩にかけ、UALのオフィスを出た。

 駅までの道のりを前に、一歩踏み出したときだ。

「お疲れ」

 どこか色気のある低音の声に、自然と視線がいった。

「は、隼さん……!」

 さっき必死に考えるのをやめた相手がそこにいる。
 てっきり、祥真は仕事中だとばかり思っていたから油断していた。

 驚いて視線を泳がせていると、祥真が手にしているフライトケースが目に入る。
 前に駅で助けてくれたときも、持っていたのを思い出して尋ねた。

「お疲れ様です。帰宅されるところですか?」
「ああ」
「そうなんですね。私も今帰るところで……」

 なんとなく口数が多くなってしまうと自分で気づく。
 まさか今日一日でこう何度も会うなんて思いもしない。

「あ、あの、いつも電車で通勤してるんですか? この間も駅でお会いしたので……」