BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー

 月穂は午後六時前に、ようやく今日のカウンセリングを終える。

 あとは情報打ち込んでデータ保存するだけ、と心の中でつぶやき、「ふう」と軽く息を吐いてパソコンのキーを叩く。

 数分後、保存し終えると、伸びをしながら席を立った。固く瞑った目をうっすら開け、部屋の中央にあるソファを見る。

(隼さんは、まだ空の上かな)

 無意識に思い出したのは、ソファに寝転がった祥真のこと。

 ボーッと昼間のことを回想していたが、携帯にメッセージが届いた音で我に返った。
 月穂はおもむろに携帯を拾い上げ、ディスプレイを見つめる。

(須田さん、隼さんの連絡先を知ることができたんだ)

 そう思ったときに、胸に鈍い痛みを感じた。そして、モヤモヤとした気持ちになっている。

 月穂は自分のこの感情を深く追求するのがなんだか怖くて、無理やり思考を変えた。

「六時! 帰らなきゃ!」

 誰もいない部屋で声を上げる。
 それから、筆記具やファイルを閉まっている間も、ちょこちょことひとりごとを言っては、なにかをごまかすように片付けをしていた。